ハンドベルの種類
イングリッシュ・ハンドベル
一般的に「ハンドベル」と呼ばれる楽器は、正確には「イングリッシュ・ハンドベル」という種類に分類されます。
この場合の「イングリッシュ」とは、地域によっては、その発祥となったイギリスを指すわけではなく、ある特定の種類のハンドベルのことを表しています。*1
例えばイギリスにおいては、厳密な意味での「イングリッシュ・ハンドベル」とは、ホワイト・チャペル社製のような、クラッパーのヘッドやハンドルが皮製である伝統的なハンドベルのことを意味し、プラスティックやゴムといったより現代的な物質が使用されたもののことは「アメリカン・ハンドベル」として区別されている一方で、アメリカや日本では、「イングリッシュ・ハンドベル」という呼称の中に、そうした現代的な「アメリカン・ハンドベル」も含みながら使用している、と言えます。
上の画像*2は、ホワイト・チャペル社製の伝統的なイングリッシュ・ハンドベルです。
下の画像は、マルマーク社製のイングリッシュ・ハンドベルです。
イングリッシュ・ハンドベルの特徴
イングリッシュ・ハンドベルは、下記の点によって特徴付けられている*3*1、と言われています。
- 調律されている
- クラッパーが一方向にしか動かない
- 音に倍音*4が含まれている
チャイム
ハンドベルと比べて、より軽くて安価であり、またクラッパーが外部に露出しているためにその動きを意識しやすいという意味で、より音を鳴らしやすいという特徴を備えるチャイムは、元々ハンドベルの練習用に使用され始めたのが、その起源と言われます。*5
ハンドルという握る部分と、キャスティングという音を響かせる金属部分の間に明確な境界のない四角いパイプのような外観で、そのキャスティング+ハンドルのパイプ部分を打つためのハンマーのような位置付けで、クラッパーがキャスティングの外部に露出して取り付けられています。
真鍮合金をキャスティングの主材質としているハンドベルに対して、アルミ合金をその主たる材質としており、重量がハンドベルよりも軽く作られています。
ハンドベルに比べて打った後の残響がより残りやすく、またより柔らかい音質を持っているため、特にクリスマスのものを始めとする様々な曲にて、ハンドベルとチャイムによる合奏が行われる場合があります。合奏に際しては、そのパートの演奏者が曲のある部分でハンドベルからチャイムに持ち替えて演奏する場合もあれば、チャイム専用の演奏者が別に控えている場合もあります。
ハンドベルと同じように、通常はリングで演奏します。構造上、シェイクやフォー・イン・ハンド、プラックといった奏法で演奏することは難しいと思われます。余り見たことはありませんが、テーブル・ダンプやタワー・スイングといった奏法は、十分に練習を重ねれば、演奏可能かもしれません。
画像は、メンバー出身団体の一つである立教学院諸聖徒礼拝堂ハンドベルクワイア所有のチャイム(マルマーク社製)です。
チャイムの呼称
製造各社により、様々な呼称が付けられています。*5
- クワイア・チャイム(Choirchimes) <マルマーク社>*6
- メロディ・チャイム(MelodyChimes) <シューマリック社>*7
- ハンド・チャイム(Hand Chimes) <ホワイト・チャペル社>*8
- トーン・チャイム(Tone Chimes) <鈴木楽器製作所>*9
ミュージック・ベル
比較的近年になって登場した楽器で、「ハンドベル」という言葉を広い意味で使う場合には、このミュージック・ベルを含みます。
ただ奏法はかなり異なり、またチャイムのようにイングリッシュ・ハンドベルと合奏を行う、といった場面を見ることは殆どありません。
そのWebサイトによると作曲家鈴木邦彦氏が考案した楽器である*10、と記載されています。
イングリッシュ・ハンドベルとの明確な相違点としては、下記が挙げられます。
- コスト的にかなり手頃な価格によって提供されていること。またレンタルも盛んなようです。
- 製造社によっては、キャスティングがカラフルに色付けされている、といった外観。
- ベルの置き方
机の上のスポンジに、ベルを横に寝かせて置くイングリッシュ・ハンドベルに対して、ミュージック・ベルではハンドルが上を向くように立てて置くようです。
英語では、「School Bell」*1、「Kid Play」*11と呼ばれているようです。
日本では下記の製造社によって、製造・販売が行われています。
また、下記のような協会組織があります。
ベル・プレート
これも比較的最近、イギリスのBellplates社による提供の始まった、ハンドベルから派生した楽器の一つです。
ミュージック・ベルと同様に、イングリッシュ・ハンドベルと比較して、コスト的なアドバンテージが高いようです。
ハンドベルのキャスティング部分がアルミニウム製の三角形の金属板となり、そこにハンドルと、クラッパーが取り付けられています。
その形状を言葉で説明するのは難しいですが、もんじゃ焼きを作って食べる時に使用する「こて」があります。あのような形のキャスティングで、持ち手部分がハンドルで、さらにキャスティングの片側にクラッパーが取り付けられている、という形を想像していただけると、多少はイメージが浮かびやすくなるかもしれません。
Bellplates社のWebサイトにて、その外見を見ることができます。
マルマーク社のベルと同様に、正音は白・半音は黒というようにハンドルが色分けされています。
提供可能レンジ:12音(1オクターブ半)〜51音(5オクターブ)*12。