ハンドベルの構造
ハンドベルには、いくつかの種類があります。
ここでは、イングリッシュ・ハンドベルを対象としたハンドベルの構造について、記載しています。
また各パーツの名称は、プロアルテにて使用しているマルマーク社における名称を使用しています。
外観
各パーツ
キャスティング(Casting)
ハンドベルの大部分を占める金属部分のこと。
クラッパーという内部にある振り子が当たることで、このキャスティングが振動し、ベルは音を鳴らします。
金属製であるキャスティング部分は、非常に汚れに弱く、コンサート前には磨いて綺麗にします。
ハンドベルには様々な奏法があり、どの奏法が正しいということはありません。
ただ奏法に関する一つの考え方として、ベルの音なった瞬間、またその後に音を止めるまで、振動によりベルの音が鳴り響いている間は、キャスティングを垂直に近い角度に立てながら動かすことで、そこから生じる音の振動が聴衆に届きやすくすることが望ましい、と言われることがあります。
クラッパー(Clapper)
英語にて、いわゆる「鐘の舌」「振り子」「鳴子」などを意味し、ハンドベルにおいても同意。
キャスティングと呼ばれるベルの金属部分にぶつかって音を鳴らすための、ベル内部に備える振り子のこと。
横から見ると、『T』字型をしており、ゴムやフェルトによってコーティングされたクラッパーの先端部が、キャスティングに当たることで、ハンドベルは音が鳴ります。
ハイベルやミドルでは、先端部はゴムによってコーティングされ、F3以下のローベルではフェルトによってコーティングされています。
そして、そのゴムやフェルトのコーティングの厚さが均一ではないことで、音質を変えることができます。
硬い音質を出すクラッパー先端部の位置はハードと呼ばれ、柔らかい音質を出す位置はソフト、その中間の音質の位置はミドルと呼ばれます。
後述するミドルの音質を出すクラッパーでは、ゴムにフェルトが貼り付けられている音もあり、またゴムに開く穴の大きさによって、ミドルやソフトの音質となる音もあります。
クラッパー先端部の位置は、ハンドベルの音質を左右する要となる要素の一つであり、演奏曲ごとに切り替えを要する場合もあります。
また演奏団体によっては、出荷された初期状態のクラッパー先端部の奏でる音質に満足できず、フェルトをテープなどで足したりすることで、音質の調整カスタマイズをする場合があります。
プロアルテでは、特にローベルにて、布製テーピング・テープによってカスタマイズが行われています。
またそのカスタマイズに絆創膏を使用する団体もあります。
殆どの奏法では、腕を使ったベルの動き・傾きによって、クラッパーをキャスティングに当てて音を鳴らしますが、プラックという奏法では、演奏者が直接クラッパーを握って、キャスティングに打ち付けます。
ハンドル(Handle)
ベルを握るためのグリップの役割を果たす部品です。
マルマーク社のベルではプラスティック製で、正音は白、半音は黒、というように色によって識別できるようになっています。
シューマリック社製のベルは同じようにプラスティック製で全音が黒色、ホワイトチャペル社製のベルでは皮によって作られています。
多くの奏法では、このハンドルを握りながらベルを操ることによって、音を鳴らします。
キャスティングの重いローベルにおいて顕著ですが、打った後のキャスティングの動きを支えるため、ハンドル部分がしなって曲がるように柔軟性を備えた作りとなっています。
ハンドガード(Hand Guard)
キャスティングとハンドルの間にある、平べったい円盤状の、ハンドベルを構成する部品の一つです。
ハンドルを握った手が、キャスティングに当たらないようにガードする役割を持っています。
画像は、マルマーク社製のベル「F#3」のプラスティック製ハンドガードです。長年の使用により、そのハンドガード部分にいくつか亀裂が走っています。楽器は大切に。(2002年練習日記)より。
プロアルテにて使用しているマルマーク社製のハンドガードでは、音の名前 (F#3/G♭3)、メーカーであるマルマーク社名などが書かれ、また半音であるため黒色となっています。
スプリング(Spring)
ベル内部でクラッパーとキャスティングの接点となるその基部にネジによって取り付けられています。
クラッパーが動いてキャスティングに当たった後に、跳ね返るように支える役割を果たします。
前方向に向かうクラッパーを支えるもの、後ろ方向に戻るクラッパーを支えるもの、というように一つのベル内部には、2つのスプリングがネジによって留められています。