ハンドベルの演奏方法
ここでは、イングリッシュ・ハンドベルを対象とした、代表的なその演奏方法について記載していきます。
リング(Ring)
ハンドベルにおいて、最も頻繁に使われる、最も基本的な奏法です。
ハンドルを下に握りながら腕を回して、拍に応じた準備の後にベルを鳴らし、残音を響かせながら、胸(や場合によっては指)をベルに当てて音を消します。
リングでは、基本的に腕は円運動を描きます。
画像は、リングで演奏するプロアルテ・メンバーです。
プラック(Pluck)
ハンドベルにおける、弦楽器のピッチカート、ピアノのスタッカートに相当する奏法です。
通常、ベルはスポンジと呼ばれる弾力性のあるマットの上に置かれます。
プラックでは、ベルをスポンジの上に寝かせ、ベル内にあるクラッパーという部品を指ではじくことで、ピッチカートやスタッカートのような残音の残らない、「ポロン〜♪」「ポロン〜♪」という音質を実現させています。
画像は、プラックで演奏するプロアルテ・メンバーです。
テーブル・ダンプ(Table Dump)
『T.D.』と略し、「マルテラート」と呼ぶこともあります。
音質的には、プラックと似ています。
奏法として異なる点は、プラックがスポンジに置かれたベルのクラッパーを指ではじくのに対して、テーブル・ダンプでは、リングと同じようにハンドルを握りながら、ベルのキャスティング部分をスポンジに叩きつけます。
そのため、テーブルダンプの方が、音の強弱や残音感をより調整しやすい面があります。
シェイク(Shake)
視覚的にも、音量的にも、ハンドベルにおける『花形』と言える奏法の一つで、高音のベル(ハイベル)で多用されます。
ベルを握った手を前後(あるいは左右)に振動させることで、ベル内にあるクラッパーと呼ばれる実際に音を出させるための振り子のような部分を、高速でベルにぶつけ続けることで、その音を連続して強く鳴り響かせる奏法です。
フォー・イン・ハンド / シェリー
「フォー・イン・ハンド」を「フォーイン」と略すこともあります。
フォー・イン・ハンド、シェリーは、ともに主にベルの大きさの小さいハイベルにおける奏法の一つで、片手に二つずつ合計四つのベルを一度に操ります。
通常、ベルは片手に一つずつ握りながら演奏しますが、アサイメントにて、譜面に書かれた自分の担当するベルの音数が一度に捌ききれない場合などに使用します。
一度に両手で合計四つのベルを操る点では同じですが、「フォー・イン・ハンド」では、持ったベルを交互に鳴らすのに対して、「シェリー」では、二つのベルを同時に鳴らす点が異なります。
画像は、クリスマスコンサートにて、フォー・イン・ハンドを実演するプロアルテ・メンバーです。
サム・ダンプ(Thumb Dump)
主にハイベルにおいて、音の残響を減じるため、親指をベルのキャスティング部に当てながら、リングと同じ要領で音を鳴らす奏法です。
ミドルの音域では、親指を当てるだけでは音が消えないため、ハンドルではなく、キャスティングを手のひらで包み込むようにを支え、この奏法を行う場合もあります。
スポンジを用いたプラックやテーブル・ダンプほどではありませんが、スタッカートに近い音質となります。
エコー(Echo)
リングと同じ要領でベルを打った後、キャスティングをスポンジに当てながら、音を減じていく奏法です。
例えば、4/4拍子で、連続した複数小節において全音符の音をこのエコー奏法により演奏する場合、最初の一拍目をリングとして演奏し、残りの二拍目、三拍目、四拍目のタイミングでスポンジに当てながら小さくしていき、また次の小節の一拍目をリングで打って二・三・四拍目をスポンジに当て、またその次の小節の一拍目を・・・という流れになります。
マレット
ハンドベル専用のマレットを使用して、ベルのキャスティング部分を叩き、音を鳴らす奏法です。
ハイベルでは、キャスティングを下にハンドルを持ちベルをぶら下げながら、マレットにてキャスティングを叩いて音を鳴らします。
ローベルでは、スポンジにベルを置きながら、キャスティングをマレットで叩いて音を鳴らします。
画像*1は、マルマーク社製のハンドベル用マレットです。大きいものがローベル用、小さくなるにつれてミドル・ハイベル用となります。
タワー・スイング(Tower Swing)
主に、低音のベル(ローベル)における奏法です。
たいてい長い拍の音符を表現する場面にて使用されます。
打つ前に大きく準備をとって、リングと同じ要領でベルを鳴らした後、上に高く掲げたベルを身体の背後に戻し、再び身体の前に高く掲げて胸で音を止めることにより、ローベル特有のずっしりとうねるように響く残音感を最大限聴く方々に届けることが可能となります。
画像は、クリスマスコンサートにて、タワー・スイングを実演するプロアルテ・メンバーです。
L.V.(Let Vibrato)
ベルを鳴らすための奏法としては、リングと同じです。
ただし、次のL.V.記号または、L.V.を止める記号が出てくるまで、ベルの音を切らずに、残音が響いたままにします。
ちょうどピアノ演奏におけるペダルを踏んだ状態のような、複数のベルの残響の絡まりあう雰囲気を作り上げます。