ハンドベル演奏曲について
アヴェ・マリア(Ave Maria)
クラッシック音楽では、3大「アヴェ・マリア」として挙げられる曲があります。
- F. シューベルト作曲のもの
- G.カッチーニ作曲と伝えられるもの *1
- J.S.バッハ=C.F.グノーのもの *2
2010年現在、プロアルテでは、2009年にG.カッチーニによる「アヴェ・マリア」を一度演奏した以外では、圧倒的に演奏回数の多い、F.シューベルトによる「アヴェ・マリア」について、ここでは対象とします。
流麗かつ穏やかな伴奏、その上で伸びやかに歌い上げる旋律が美しく、一般的にもよく知られた曲です。
アンケートでも、2003年:4位、2004年:8位、2006年:7位、2009年:4位と、必ずしも人気曲上位の常連ではないものの、常に安定した支持を保っています。
プロアルテにとっての定番中の定番と言える曲であり、2010年現在、16回のクリスマスコンサートにおいて、演奏したことのない年は1994、1997、1998年の僅か3回を数えるに過ぎません。
「主よ、人の望みの喜びよ」、「そりすべり」や「オー・ホーリー・ナイト」と同様に、様々なアサイメント入替や、曲想の変化を伴いながらも、この曲と一緒にプロアルテは歩んできたと言っても過言ではありません。
オー・ホーリー・ナイト(O Holy Night)
賛美歌 第2編239番「さやかに星はきらめき」。*3
2010年現在、クリスマスコンサートにて、13/16回の演奏を行っています。
流れるような伴奏と、美しい旋律によって構成され、演奏していて穏やかな気持ちにさせられる曲です。
いつ頃からのことか、プロアルテのクリスマスコンサートでは、プログラム第二部の終盤や、アンコールにおいて演奏されることが多くなり、個人的にはこの曲の演奏をしていると、「ああ、今年のクリスマスコンサートも終わりだなあ」と思うようになりました。
主よ、人の望みの喜びよ(Jesu, Joy of Man's Desiring)
カンタータ「心と口と行いと生活で」BWV147の第6曲、および第10曲に登場するコラール。*4
クラッシック音楽として広く知られ、また親しまれているため、ハンドベルでも「これまでこれを演奏したことのない団体というのが果たしてあるのだろうか?」というくらい様々な団体によって広く演奏されており、プロアルテでもレパートリーの一つとしています。
様々な演奏方法がありますが、プロアルテでは淡々と流れるようなメロディーの中でも、少しでも強弱による抑揚を付加した形にて演奏しています。
正式な曲名が長いため、「主よ」あるいは「ジェズ」とよく略称します。
そりすべり(Sleigh Ride)
軽快なテンポ、明るく楽しげな曲調で有名な、クリスマスの時期に流れる定番曲です。
アンダーソンの他の曲でも見られるように、メインの楽器以外にも、様々な補助の楽器を使用して、クリスマス期に「そりすべり」遊びにて、そりが楽しげに疾走している様子が表現されています。
- そりの鈴*5
序盤にそりに付けられた鈴の音が遠くから徐々に近づいてくる様子が表されます。
- ウッドプロック
そりを引いて駆ける馬の足音が表現されます。
- 鞭(ルーテ)*6
中盤および終盤で、そりを引く馬に当てる鞭の音が、表現されます。
「アヴェ・マリア」や「主よ、人の望みの喜びよ」、「オー・ホーリー・ナイト」と共に、プロアルテにとっての定番曲であり、2010年現在、16回のクリスマスコンサートの内で13回のプログラムに含まれています。
アンケートにおいても、2003年:6位、2004年:4位、2006年:2位、2009年:3位と、人気曲上位の常連となっています。
パッサカリア(Passacaglia)
ヘンデルによる「ハープシコード組曲第7番ト短調 HWV.432」の最終楽章の主題であるパッサカリアが、グリーグを父に持つ、ノルウェーのヴァイオリニスト、指揮者、作曲者であるハルヴォルセンによって編曲されたものです。
音楽様式としての「パッサカリア」については、Wikipedia「パッサカリア」を参照。
他楽器と同様に、ハンドベルにおいても、下記のような点から、高い技術を要する難曲であると言われます。
- あるテーマをこれでもかと繰り返す
- 基本的に長い
- ハイベル・ミドル・ローベルとも絶え間なく音が多い
- 連続して流れる音に、多くを引き連れる伴奏和音がタイミングを揃えて追随しなくてはならない
- またその流れる音同士を切れ目なく、音質的にも視覚的にも繋げて演奏する
緩やか/速い、どちらのテンポでも演奏されることはありますが、「速い」演奏の場合には、「連続した流れ落ちてくる音」(ハイベルでは中盤に流れ上がり、ローベルでは終盤に流れ上がる)を流暢に、また重くならないようにスムーズに聴かせる工夫も必要となります。
多くのハンドベル・リンガーにとってこの曲は、一つの高い壁であり、その演奏はエベレスト登頂に匹敵する難業なのではないかとすら、個人的には思っています。
パッヘルベルのカノン
「同一の旋律を複数のパートが、異なる時点から開始する」というカノン様式の曲として、一般的に有名です。
ハンドベル演奏では、主にハイベルやミドルにて旋律を担当します。(4ベルまでをローベルと捉えるのであれば、ローベルにも一部、降りてくる箇所があります)
旋律部分の表現では、サムダンプ奏法を使用する箇所があります。
また8分・16分音符による細やかな旋律の流れを含むため、速いテンポで演奏すると、旋律部分を軽やかに歌い上げるのに苦労する場合があります。
伴奏は、一貫して絶え間ない同一伴奏テーマの繰り返しとなり、アサイメント構成により、ローベルを担当する演奏者が少ない場合は、筋トレの様相を呈します。
また伴奏では、エコー奏法が使用される箇所があります。
パリは燃えているか
1990年代の放映されたNHKのドキュメンタリ「映像の世紀」のサウンドトラック用に製作された曲です。*7
「パリは燃えているか」というタイトルは、第二次世界大戦末期のパリ焦土作戦命令の実行を確認するアドルフ・ヒットラーの言葉に由来します。
より詳細には、ノルマンディー侵攻以降に、それまでパリを占領していたナチス・ドイツが、パリ撤退における焦土作戦を企図し、アドルフ・ヒットラーはパリ占領ドイツ軍司令官であったディートリヒ・フォン・コルティッツ将軍にパリ破壊・焦土作戦を命令したが、コルティッツ将軍は連合軍に無条件降伏してパリ解放が実現することによって、結果として実行されず、その命令の実行を確認するヒットラーのこの言葉が空しく響く・・・、という1966年のフランス・アメリカ合作映画「パリは燃えているか」の内容に基づいています。*8
プロアルテでのハンドベル演奏では、ピアノ譜をベースとしており、流れるような伴奏に、短調だが決然としたメロディーが速いテンポにて流れ、心の奥底を揺さぶられるような情緒的な曲調となっています。
個人的には、とてもベルに合う「格好良い」曲であると思っています。
プロアルテでは2010年現在、2002,2004年にクリスマスコンサートにて演奏を行っており、記録の残っている2004年クリスマスコンサート・アンケートでは人気曲の1位を獲得するなど、一般的な人気も高いと言えます。
プロアルテでは、「パリ燃え」と略される場合があります。
ホワイト・クリスマス(White Christmas)
クリスマス曲における定番ナンバーであり、プロアルテのレパートリーの一つです。
メンバーの中でも根強い人気を誇り、また記録の残っている、2004年アンケートおよび2009年アンケートで、人気曲の1位を獲得するなど、コンサートで演奏すると、必ずと言って良いほどアンケート上位に位置する一般的にも人気の高い曲であると言えます。
プロアルテでは、ピアノ譜をベースとしたジャジーなアレンジ譜面による演奏もあります(2008年)が、ベル・オリジナル譜による演奏回数の方が圧倒的に多くを占めています。
ベル・オリジナル譜にてこの曲は、静かでゆったりとした序盤に始まり、ミドルにメロディーラインが下りてきて聞かせる中盤を経て、圧倒的なローベル音量、ミドルの連打による終盤にて最高潮の盛り上がりを迎えます。
演奏にパワーを要するのも事実ですが、その盛り上がりでの和音が揃った際の爽快感などが、馴染み深い曲調と併せて、メンバー、聴衆の方それぞれに根強い人気を誇る一因であると考えられます。