【ハンドベルの歴史】
ハンドベルは、約400年前にイギリスで誕生した楽器です。
教会のタワーベルの練習用に考え出され、20世紀になって盛んに演奏されるようになりました。
正式には「イングリッシュ・ハンドベル」と呼びます。
演奏は半音階に調律されたベルを一人が数個担当し、
5オクターブ61個を10人前後で分担して行います。
大きなものは4Kg近くありますが、高音の小さなものは一人で4つのベルを
同時に演奏することができます。
ベルの特性を活かした演奏は「見る」楽しさもあり、ベルの魅力の一つともなっています。
大小様々なベルで音楽を創っていくためには、統一されたテクニックとリズム感、
そして何よりも協調性が必要とされます。
それゆえに、優れたアンサンブルが可能になれば、フルートやハーブ、パイプオルガンといった
様々な楽器の音色のようにも聴こえてきます。
ハンドベルの音色が「天使のハーモニー」と称されている由縁です。
【ハンドベルの奏法】
ハンドベルにはいくつもの演奏方法があります。
代表的なものを挙げます。
- リング(Ring)
最も頻繁に使われる奏法です。
ハンドルを下に握りながら腕を回して、拍に応じた準備の後にベルを鳴らし、
残音を響かせながら、胸(や場合によっては指)をベルに当てて音を消します。
リングでは、基本的に腕は円運動を描きます。
<リングで演奏するメンバー> |
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- シェイク(Shake)
花形の一つの奏法で、高音のベル(ハイベル)で多用されます。
ベルを握った手を前後(あるいは左右)に振動させることで
ベル内にあるクラッパーという実際に音を出させるための振り子のような部分を
高速でベルにぶつけ続けることで、その音を連続して強く鳴り響かせる奏法です。
- フォー・イン・ハンド(Four In Hand)、シェリー(Sherry)
「フォー・イン・ハンド」は「フォーイン」とも略します。
「フォーイン」「シェリー」ともにハイベル(高音)における奏法の一つで、片手に二つずつ合計四つのベルを一度に操る奏法です。
通常、ベルは片手に一つずつ握りながら演奏しますが、
アサイメント(担当ベルの割り振り)によって、譜面に書かれた自分の担当するベルの音数が一度に捌ききれない場合などに使用します。
※未確認ですが、目にも留まらぬ速さで新しい腕を臨時に生やして対応するメンバーもいるという情報もあります。
一度に両手で合計四つのベルを操る点では同じですが、
「フォーイン」では、持ったベルを交互に鳴らすのに対して、
「シェリー」では、二つのベルを同時に鳴らします。
<フォー・イン・ハンドを実演するメンバー> |
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- プラック(Pluck)
弦楽器のピッチカート、ピアノのスタッカートに相当するベルの奏法です。
通常、ベルはスポンジと呼ばれる弾力性のあるマットの上に置かれます。
プラックでは、ベルをスポンジの上に寝かせ、ベル内にあるクラッパーという部品を
指ではじくことで、ピッチカートやスタッカートのような残音の残らない
「ポロン〜♪」「ポロン〜♪」という音質を実現させています。
<プラックで演奏するメンバー> |
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- テーブル・ダンプ(Table Dump またはT.D.)
音質的には、上述のプラックと似ています。
プラックと異なる点は、プラックがスポンジに置いたままクラッパーをはじくのに対して、
テーブル・ダンプでは、リングと同じようにハンドルを握りながら、ベルをスポンジに叩きつけるため
音の強弱や残音感を調整しやすい部分があります。
- タワー・スイング(Tower Swing)
低音のベル(ローベル)における奏法です。
主に長い拍の音符を表現する際に使用されます。
打つ前に大きく準備をとってリングと同じ要領でベルを鳴らした後、上に高く掲げたベルを
身体の背後に戻し、再び身体の前に高く掲げて胸で音を止めることで、
ローベル特有のずっしりとうねるように響く残音感を最大限聴く方々に届けることができます。
<タワー・スインリングを実演するメンバー> |
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【ハンドベルの種類】
- ハンドベル
- マルマーク社(Malmark,Inc.)
アメリカに本拠を置くハンドベル・メーカーです。
後述するシューマリック社製のベルに比べて柔らかな音質であると言われます。
ピアノの鍵盤と同じように、正音は白いハンドル、半音は黒いハンドルと色が分けられています。
プロアルテでも使用させていただいております。
- シューマリック社(Schulmerich)
やはりアメリカに本拠を置くハンドベル・メーカーです。
ハンドルの部分が白いマルマーク社製のベルに比べて、全てのベルが黒いハンドルとなっており、
より硬質な音感を持つと言われます。
- ハンド・チャイム
「クワイアー・チャイム」「トーン・チャイム」とも呼びます。
ハンドベルとは違って、ハンドルという握る部分と
キャスティングという音を響かせる金属部分の間に明確な境界のない四角いパイプのような外観で、
クラッパーも外部に露出しており、打った後の残音がハンドベルに比べて
残りやすい構造となっています。
またキャスティングの材質も、ハンドベルとは異なるようです。
- ミュージック・ベル
ハンドベルとの最大の違いは、ハンドベルは内部のクラッパーが上下にしか動かないのに対して、
ミュージックベルではクラッパーの動く方向の制約がありません。
またキャスティングと呼ばれるベルの外観の殆どを占める金属部分の材質も、
ハンドベルとは異なります。